nyankoの妄想自作物語

各お題を元に自作物語を綴る...。

「捨てられないもの」aRK time(3人の時間)より...。

お題「捨てられないもの」
aRK Time
(3人の時間)より...。

※ルーレットのお題で自作の物語を綴っています。宜しかったら僅かな時間を共に...🍀

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an=アン・ハサウェイ似
Ron=キャメロン・ディアス似
Kei=ケイト・ウィンスレット似

※「aRK」当時、何にでも別名をつけるのが流行っており、3人も自分達のシェアハウスを「aRK」=アークと呼んでいた。


3人には家庭環境に多少事情があり、アルバイトの収入ではルームシェアしか選択の余地がなかったのだ。加えて学生だけのシェアハウスとは、当時ではまだ珍しく保証人の問題もあった...。


息子さんとの同居を控えた大家さんが、亡くなった奥さんとの思い出の家を手放そうかと話している処に、偶然3人が食い付いたのがきっかけ。今でこそ笑い話だが、その時は必死な3人の少女に気圧されたと高らかに笑う大家さん。大家さんの行き付けのお店のマスターも同調して笑っている。


結局不動産屋を通さず、直接タナコの契約を結んだ。大家さんは息子さんと直ぐに同居を始め、家具は殆ど備え付け状態で使用出来る。喫茶店のマスターは近所なので、簡単な管理業務なら引き受けてくれるという。更に喫茶店ではアルバイトを募集しており、店員は1名だが3交代制なら可😍全てがこの1時間で決定するというミラクルに遭遇。


進行役はRon。anは笑顔で相槌を...Keiに至ってはポカンと呆気にとられているうちに全て決まるという神業。話が纏まった頃合いで、マスターの妻がコーヒーをご馳走してくれた。紅茶派のanは、この時のコーヒーは凄く美味しかったと振り返る。


あの頃はまだ背筋も延びていて小粋なジェントルマンに見えた大家さんは...今では車イス。カウンター席では周囲との目線の高さが違い、テーブル席へ移動した。おしゃれなマスターは髪こそカラーリングでキメているが年輪は確かに刻まれている。anとRonは年月を感じていた。


化粧室からkarenが戻り楽しそうな笑い声の詳細を聞きたがった...。ざっくりと聞かせていると、マスターが視界に入りanが爆笑する。まるで「待て」の状態で「よし!」の号令を尻尾フリフリ待っている犬のイメージだ。間髪入れず妻が「よし!」と声をかけ流石夫婦の呼吸...とRonは目を細めた。


「紹介して」の笑顔に空気の読める子karenは自己紹介を始める。ちゃんと名前の由来まで話し終えると、Keiの娘と聞いたマスターの妻は涙が溢れた...。大家さんとマスターは、大切な記憶を辿るように懐かしそうな顔に...。karenはここにも母が居る気がして心が暖かくなる。今度は兄弟を連れてこようと考えていた...。


それから数時間はあっという間だった...。karenは自分と同じ年頃の母の話に新鮮でもあり、どこか不思議な気分になる。マスターが新しいコーヒーを入れてくれ、妻は空いたカップを片付けた。すると...血相を変えて奥から飛び出した妻の手にはコーヒーの出涸らしが...。その形相に一瞬空気が固まった😱


しばし口論を聞いて要点を纏めると、出涸らしの再利用をしているので捨てないで欲しい妻と、乾燥する場所が一杯になっていたし、毎日大量に出るから1~2回くらい棄てても問題ない。臭い消しにも役に立つし大袈裟に騒ぐ事じゃないというマスター。


この表面上だけで判断するなら、せっかくの場の雰囲気もある事だし...マスターに分があるのでは⁉️とkarenは考えていた。だが、anとRonは妻の言い分を掘り下げてあげ、ハーブや観葉植物、野菜を育てている上での苦労や日常の再三の注意など、見えない部分にスポットをあてて意見する。大人らしく声の温度と言葉選びに注意して...。


僅かな時間で不思議と双方の気持ちが静まった。口論は直接のきっかけだけではなく、プロセスに重きがあった事を納得したkarenは、同時にanと Ronの社会人としての能力の高さを尊敬した。かっこ良さが誇らしい。


深呼吸の後、コーヒーを飲みながら...「捨てられないものは何ですか⁉️」「はい✋プライドです!」と、突然Ronが語り出す。ある朝、自分の非を認めない夫と些細な喧嘩をしたのだと...。「あなたはプライドが捨てられないの」と吐き捨てた言葉が、最後の言葉になってしまったのだと...。疲れている時には決まって今も夢に見る。そして泣きながら目が覚める。


後悔の中で、こうすれば良かったと思っても、あの日には戻れないし、もう夫に伝える事もできない。苦しみのどん底で、社会から消えたいと願う私にKeiは寄り添ってくれていた。何を言う訳でもなく、ただ抱き締めてくれていた。なのにあの頃の私は全てをシャットアウトしていたの。


気が付くと、ある場所に立っていて赤ちゃんが私の足で捕まり立ちをしていた。ヨロヨロしながらも目が合うと笑う、とても可愛らしい子。よろけてひっくり返った瞬間両手で赤ちゃんを守っていたの。私には子どもを生む未来が無かったから、子どもは嫌いなんだと思い込んでいた。だから手の中の赤ちゃんが愛おしくてたまらないなんて、涙が溢れて物凄く驚いた。


その赤ちゃんは、夫の事故の加害者の子どもで、母親は自分の命と引き換えに出産し父子家庭だった。天涯孤独の身になってしまった赤ちゃん...。もう直ぐ到着するって!とLINEを皆に見せるRon。かなり細かい事は、はしょっちゃったけど...あの時の夫のプライドが...夫も戦って居たのだと今では理解出きる。反面教師になれたら嬉しいです!と敬礼する仕草で笑いを誘う。


karenは、きっと段取りをしたのは母だったのだろう...と思った。母はそう言う人だ。偉大な母...。


そして喫茶店の入り口の開く音が店内に響いた...。

end

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最後まで読んで頂き
ありがとうございました
🍀✨🤗✨

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